【無意識に操るヒトの動かし方】使う人によって善にも悪にもなる手法ってありますよね?この力をビジネスに使うと効果てきめんで顧客を思い通りに誘導をできます
はじめに
こんにちは、ゆーまです。
あなたは、「人の心を動かしたい」「自社の商品やサービスの魅力を、もっと深く伝えたい」と日々考えている情熱的な経営者だと思います。しかし、多くの情報が溢れる現代において、お客様の注意を引き、行動を促すことは容易ではありません。
「どうすれば、私たちの声がお客様に届くのだろう?」
「なぜ、競合のあの商品はあんなに売れているのだろう?」
そんな悩みを抱えていませんか?
もし、人の感情や行動を、まるで魔法のように自然な形で導く方法があるとしたら、知りたくはありませんか?
今回お話しするのは、「扇動マーケティング」という、非常に強力な手法です。
「扇動」と聞くと、少し過激で、ネガティブなイメージを持つかもしれません。確かに、この手法は使い方を誤れば、人を不本意な方向へ導いてしまう危険性をはらんでいます。
しかし、それはまるで一本の「包丁」と同じです。
包丁は、素晴らしい料理を作って人々を幸せにすることもできれば、使い方を間違えれば人を傷つける道具にもなり得ます。重要なのは、「誰が」「何のために」使うか、ただそれだけです。
マーケティングの本質は、言葉を選ばずに言えば、「人の感情をどう動かし、最終的に商品を購入していただくか」という技術の体系です。行動経済学や心理学も、すべては人の感情がどう動くのかを分析し、ビジネスや社会をより良くするために応用されています。
この記事でお伝えする「扇動マーケティング」は、その中でも特に人の深層心理に働きかける、いわばマーケティングの「裏技」とも言える領域です。
この知識を知ることで、あなたは2つの大きなメリットを得られます。
- 防御力が身につく: 世の中に溢れる様々なマーケティング手法に、自分がどう誘導されているのかを客観的に見抜けるようになります。これは、情報過多の社会を賢く生き抜くための「盾」となります。
- 攻撃力が身につく: お客様の心を深く理解し、本当に良い商品やサービスを、より効果的に届けられるようになります。これは、あなたのビジネスを飛躍させる強力な「矛」となるでしょう。
この記事では、扇動マーケティングの基本から、具体的なテクニック、そして明日からすぐに実践できる実例まで、余すところなくお伝えしていきます。
これは、あなたがビジネスという戦国時代を勝ち抜くための、強力な武器となるはずです。ぜひ、正しい目的のために、この知識を役立ててください。
それでは、禁断の扉を開きましょう。
第1章.扇動マーケティングとは?
1-1. 扇動マーケティングの正体
まず、「扇動マーケティング」とは一体何なのでしょうか。
その言葉の通り、「人々の意識を無意識的に誘導し、商品やサービスを販売する」マーケティング手法です。
ポイントは「無意識的に」という部分です。
お客様が「これは広告だ」「売り込まれている」と意識した瞬間、心にはシャッターが下ります。私たちは、このシャッターが下りる前の、無防備な状態の心にそっとアプローチするのです。
実は、優れたマーケターであれば、大なり小なり、この扇動の技術を無意識のうちに使っています。人の感情を揺さぶり、気づいたら行動を誘導しているのです。
1-2. 日常に潜む扇動の具体例:パチンコ店の看板
言葉で説明するよりも、具体的な例を挙げた方が分かりやすいでしょう。非常にシンプルで分かりやすい例が、パチンコ店の看板です。
あなたも、朝早くからパチンコ店の前に行列ができている光景を見たことがあるかもしれません。その行列の最後尾で、店のスタッフが「最後尾はこちらです」と書かれた看板を持っているのを見たことはありませんか?
一見すると、ただ行列の最後尾を示しているだけの、何でもない看板です。
しかし、ここに扇動マーケティングの巧みな仕掛けが隠されています。
考えてみてください。もし、その日、行列が一人もできていなかったとしたら、この看板は意味がないのでしょうか?
いいえ、むしろ人がいない時にこそ、この看板は絶大な効果を発揮するのです。
なぜなら、「最後尾はこちらです」という看板が存在するだけで、私たちの頭の中には「この店は、行列ができるのが当たり前なんだ」という前提が無意識のうちに刷り込まれるからです。
「最後尾」という言葉があるということは、そこに「列」が存在するのが普通の状態だ、と脳が勝手に解釈してしまうのです。
この刷り込みが、次のような思考の連鎖を生み出します。
- 「最後尾はこちらです」という看板がある。
- ということは、この店はいつも行列ができる人気店なのだろう。
- 人気店だということは、きっと良い条件で遊べる(勝てる)に違いない。
- ならば、私も並んでみよう。
結果として、実際には誰も並んでいなかったとしても、その看板を見た人が「人気店なんだ」と勘違いし、一人、また一人と列を作り始め、やがて本物の行列が生まれてしまうのです。
これは、複雑なコピーライティングも、派手な広告も使っていません。ただ「最後尾はこちらです」という前提を作り出す言葉が書かれた看板を置いただけです。
このように、人々の「思い込み」を利用し、特定の行動へと自然に誘導すること。これが扇動マーケティングの基本であり、その恐るべき効果なのです。
私たちは、自分が誘導されていることに気づくことなく、自らの意思で行動していると信じ込んでしまいます。この章を読んだあなたは、もう街中で「最後尾はこちらです」の看板を、以前と同じ目では見られないはずです。それが、扇動の仕組みに気づいた証拠なのです。
第2章.扇動するために必要な要素
2-1. 人はなぜ簡単に扇動されてしまうのか?
パチンコ店の例を見て、「なぜ、たった一枚の看板で人は動かされてしまうのだろう?」と不思議に思ったかもしれません。
人々を扇動し、意図した方向へ誘導するために必要な要素。それは、驚くほどシンプルです。覚えていただきたいのは、たった一つだけです。
それは、「意識を誘導させる」ということです。
これさえできれば、人々は驚くほど簡単に、感情も行動も揺さぶられてしまいます。
では、「意識を誘導させる」とは、具体的にどういうことでしょうか。それを理解するために、人間の「意識」の根本的な特性を知る必要があります。
2-2. 人間の意識は「シングルタスク」
結論から言うと、人間の意識は、その瞬間に一つのことしか処理できません。
「いやいや、私は音楽を聴きながら仕事ができるし、マルチタスクは得意だよ」と思う方もいるかもしれません。しかし、厳密に言えば、それは意識を高速で切り替えながら、複数の作業をこなしているに過ぎません。一つの瞬間に、二つのことを同時に「意識」することは、人間にはできないのです。
ここで、簡単な実験をしてみましょう。ぜひ、画面の前で一緒にやってみてください。
- まず、右手を出して、「グー・チョキ・パー、グー・チョキ・パー」と動かしてみてください。簡単ですね。右手に意識が集中しているので、スムーズにできます。
- 次に、左手で、「パー・グー・チョキ、パー・グー・チョキ」と動かしてみてください。これも、少し練習すればできるようになるでしょう。今度は、左手に意識が集中しています。
- では最後に、両手で同時にやってみましょう。右手は「グー・チョキ・パー」、左手は「パー・グー・チョキ」です。
せーの、どうぞ。
…どうでしょうか?
ほとんどの方が、頭が混乱して、ぐちゃぐちゃになってしまったのではないでしょうか。
これは、あなたの運動神経が悪いからではありません。
右手の動きと左手の動き、二つのことに同時に意識を向けようとした結果、脳が処理できずに混乱を起こしているのです。
この実験が、扇動の核心を物語っています。
お客様の感情を揺さぶり、行動を誘導したいのであれば、考えるべきことはたった一つ。
「お客様の意識を、何に向けるのか?」
これだけです。
あれもこれも伝えたい、と多くの情報を与えようとすると、お客様の意識は分散し、混乱してしまいます。結果、何も響かず、行動にも繋がりません。
そうではなく、たった一つのことに意識を集中させる。
そうすることで、他の余計なこと…例えば、「これは値段が高いかな」「本当に効果があるのかな」といった、購入を妨げるネガティブな思考に意識が向かなくなります。
2-3. 「意識の集中」が扇動の鍵
先ほどのパチンコ店の例に戻ってみましょう。
あそこで行われていたことは、「最後尾はこちらです」という看板に、お客様の意識を向けさせた、ただそれだけです。
看板に意識が向いた瞬間、お客様の頭の中では「人気店なんだ」という思考が自動的にスタートし、他の雑念(「本当にこの店は良い店なのか?」など)は排除されます。
- 意識を一点に集中させる。
- その結果、余計なことを考えさせない。
- そして、こちらが意図した思考のレールに乗せる。
これが、扇動の基本的なメカニズムです。
あなたのビジネスに置き換えてみてください。
お客様に商品の説明をするとき、たくさんの機能を羅列していませんか?
広告で、あれもこれもと魅力を詰め込みすぎていませんか?
もしそうなら、お客様の意識は分散し、何も心に残りません。
そうではなく、まず「お客様の意識を、たった一つの、何に集中させるべきか?」を考えることから始めてみてください。
それは、パン屋さんの「焼きたての香り」かもしれません。
あるいは、商品のキャッチコピーにある、たった一言の「問いかけ」かもしれません。
ゴールは一つです。
お客様の意識の矛先をコントロールすること。
それができれば、あらゆる人たちの扇動が可能になるのです。
第3章.相手を扇動する方法
3-1. 人を動かす「思い込み」の正体
意識を一つのことに集中させることが扇動の鍵である、とお話ししました。では、なぜ特定の物事に意識が向くと、人は簡単に行動してしまうのでしょうか。
その背景には、私たちが無意識に抱いている「思い込み」が存在します。
パチンコ店の例で言えば、「行列ができている店=良い店」という思い込みです。
この「思い込み」こそが、人々が誘導される大きなヒントになります。
そもそも、この「思い込み」はどこから来るのでしょうか?
それは、「過去の経験から自動的に学習したパターン」です。
- 熱いヤカンに触って火傷をした経験から、「ヤカンは熱くて危険だ」と学ぶ。
- あるブランドの服を着て褒められた経験から、「このブランドは自分を素敵に見せてくれる」と学ぶ。
このように、人は過去の成功体験や失敗体験から、「〇〇は××である」という自分なりの法則(思い込み)を無数に作り上げて生きています。この学習能力があるからこそ、私たちは効率的に世界を認識し、日々を生き延びているのです。
しかし、問題は、この過去の経験から作られた思い込みが、必ずしも正しいとは限らないということです。
例えば、たまたま出会った一人のアメリカ人に騙された経験から、「アメリカ人は全員嘘つきだ」という思い込みを持つかもしれません。しかし、現実には親切なアメリカ人もたくさんいるはずです。
この「現実」と「思い込み」のギャップに、扇動の付け入る隙があります。
3-2. 扇動の第一歩:相手の心の扉を開く
私たちがお客様を扇動しようとする時、多くの場合、お客様が持っている既存の「思い込み」を、こちらが望む新しい「思い込み」に書き換える必要があります。
例えば、「パチンコは良くないものだ」という強い思い込みを持っている人に、パチンコ店に来てもらうためには、「パチンコは楽しい娯楽だ」という真逆の思い込みをインストールしなければなりません。
そのために必要になるのが「説得」という作業です。
しかし、ここで多くの人が壁にぶつかります。
「どんなに商品の良さを説得しても、お客様は全く聞いてくれない…」
それはなぜでしょうか?
どんなに正しい理論や魅力的な言葉を並べても、相手の耳に届かない。その理由は、相手が「クローズマインド」の状態にあるからです。
クローズマインド vs オープンマインド
- クローズマインド:
心を閉ざしている状態です。具体的には、危険を察知し、理性が働いて、完全に身を守ろうとしている状態を指します。
街中で見知らぬ人に突然話しかけられた時、「何だろう?」「怪しい人かな?」と身構えてしまう、あの感覚です。この状態の人に何を言っても、言葉は心の壁に弾かれてしまいます。 - オープンマインド:
心がオープンな状態です。危険だと認識しておらず、安心している状態です。
家族や親しい友人から話しかけられた時のような、リラックスした感覚です。この状態の人は、こちらの言葉を素直に受け入れてくれます。
つまり、相手の思い込みを変える「説得」を行う前に、まず相手の防御を解き、クローズマインドからオープンマインドの状態へと導く必要があるのです。
いきなり説得を始めるのは、玄関のドアを固く閉ざしている家に向かって、ドアの外から大声で話しかけているようなものです。まずは、相手に「私は敵ではありませんよ」「安心してください」と伝え、そっとドアを開けてもらうことから始めなければなりません。
3-3. 「一点集中」が最強の鍵である理由
ここで、第2章でお話しした「意識を一点に集中させる」という話が繋がってきます。
実は、人は一つの物事に意識が集中している時、他のこと(特に危険を察知する機能)に意識が向かなくなり、自然とオープンマインドの状態に近くなるのです。
例えば、あなたが夢中になって本を読んでいる時を想像してください。
物語の世界に没頭し、意識が完全に本の内容に集中している時、周りで多少の物音がしても気づかなかったり、話しかけられても生返事になったりしますよね。
これは、意識のリソースがすべて「本を読む」という一点に注がれているため、他の情報(音、人の声など)を処理する余裕がなくなっている状態です。危険を察知するためのアンテナも、一時的に感度が鈍っています。
この状態こそが、扇動にとって最も好ましい「無防備な状態」なのです。
パン屋さんの例を考えてみましょう。
1,000円の高級食パンが売られています。お客様は「美味しそうだな」と思う一方で、「でも1,000円は高いな」「今月の家計はどうだっけ?」と、様々な思考が頭を巡らせています。これは意識が分散し、理性が働いている「クローズマインド」に近い状態です。
そこで、店側がこう仕掛けます。
店内にパンの焼きたての香りを充満させ、ポップにこう書くのです。
「まずは、この香りを深く吸い込んでみてください。小麦の甘い香りがしませんか?」
こう言われると、お客様は思わずパンの香りに意識を集中させます。
その瞬間、他の思考…「値段が高い」「家計が…」といった理性的なブレーキが、一時的に外れるのです。頭の中は「美味しそうな香り」でいっぱいになり、「今すぐこのパンが食べたい!」という感情的な欲求が、理性を上回ります。
一言で言うと、人は一点に集中させられると「バカになる」のです。
(言葉は悪いですが、本質です。)
理性が麻痺し、感情が優位になる。
この状態を作り出すことこそが、扇動の極意です。
相手を説得したければ、まずオープンマインドにすること。
オープンマインドにする最も簡単な方法は、相手の意識をたった一つのことに集中させること。
この流れを、ぜひ覚えておいてください。
第4章.相手を扇動する具体例
ここからは、あなたのビジネスにすぐ応用できる、より具体的な扇動のテクニックをいくつかご紹介します。これらの手法は、知らず知らずのうちに私たちの周りで使われています。
4-1. 考える時間を与えない:「時間制限」
これは最も古典的で、かつ非常に強力な手法です。
「本日限定価格!」「タイムセール終了まで、あと10分!」
といった謳い文句は、あなたも一度は目にしたことがあるでしょう。
なぜ時間制限をかけると、人は行動してしまうのでしょうか?
それは、考える時間がなくなることで、脳がパニック状態に陥るからです。
人は、何かを決定する際に「じっくり考えて、最も合理的な選択をしたい」という欲求を持っています。しかし、「残り時間あとわずか」という状況に置かれると、その「じっくり考える」というプロセスを強制的にスキップさせられてしまいます。
「今、このチャンスを逃したら損をするかもしれない!」という損失回避の感情(プロスペクト理論)が強く働き、冷静な判断ができなくなるのです。
結果として、「ええい、ままよ!」と、深く考えないまま購入ボタンを押してしまうのです。
【あなたのビジネスへの応用】
- Webサイトで、期間限定の割引クーポンを表示する。
- セミナーやイベントの申し込みで、「早期割引は〇月〇日まで」と期限を設ける。
- 商談の最後に、「この条件でご契約いただけるのは、本日中にご返答いただいた場合のみです」と、ささやかな特典と共に決断を促す。
重要なのは、お客様から「考える時間」という理性の武器を、一時的に取り上げてあげることです。
4-2. 見れば見るほど好きになる:「接触頻度」
人は、接触する回数が増えれば増えるほど、その対象に対して好意や安心感を抱きやすくなるという心理的な性質を持っています。これは「ザイオンス効果(単純接触効果)」として知られています。
最初は特に興味がなかった曲でも、テレビやラジオで何度も耳にするうちに、いつの間にか口ずさんでいたり、好きになっていたりした経験はありませんか? あれがまさにザイオンス効果です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
答えは簡単です。人は、過去に見たことがあるものを「安全だ」と認識するからです。
脳は、見知らぬものに対しては「これは危険かもしれない」と警戒しますが、何度も見ているお馴染みのものに対しては、「これは前に見たことがあるから大丈夫だ」と、警戒レベルを下げるのです。
テレビCMが、なぜ何度も何度も同じ内容を流すのか。
それは、商品やブランド名に繰り返し接触させることで、視聴者に無意識のレベルで「安心感」と「親近感」を刷り込んでいるのです。
そして、いざスーパーの棚で商品を選ぶ段になった時、全く知らない商品と、CMで何度も見たことがある商品のどちらに手を伸ばしやすいかは、言うまでもありません。
【あなたのビジネスへの応用】
- SNSで、毎日決まった時間に情報を発信する。
- メールマガジンやLINE公式アカウントで、定期的に役立つ情報を届ける。
- 一度Webサイトを訪れた人に対して、リターゲティング広告を表示する。
重要なのは、売り込みばかりするのではなく、お客様の目に触れる回数を増やし、「いつも見かける、お馴染みの存在」になることです。接触頻度が増えれば増えるほど、安心感は高まり、いざという時に選んでもらいやすくなります。
4-3. 小さなYESを積み重ねる:「イエスセット方式」
これは、セールスや交渉の場面で非常に有効なテクニックです。
相手に最終的に「YES」と言わせたい要求がある場合、その前に、相手が確実に「YES」と答えるであろう、簡単で些細な質問や同意を積み重ねていく手法です。
人は、自分の発言や態度に一貫性を持ちたい、という心理的な欲求(一貫性の原理)を持っています。
一度「YES」と答えると、その後の質問にも「YES」と答え続けやすくなる傾向があるのです。
例えば、このように使います。
「今日は本当に良いお天気ですね」(→ YES)
「こんな天気の日は、外に出かけると気持ちいいですよね」(→ YES)
「お客様も、日々の健康には気を使われていますよね?」(→ YES)
「健康のためには、やはり質の良い睡眠が大切だと思いませんか?」(→ YES)
「でしたら、この最高の睡眠を約束する枕を、ぜひ一度お試しになってみませんか?」(→ 最終的な要求)
いきなり「この枕を買いませんか?」と切り出すよりも、はるかに抵抗なく話を聞き入れてもらえるようになります。
小さな「YES」を繰り返すことで、相手の心は肯定的な方向に傾き、無意識のうちに「NO」と言いづらい心理状態になっているのです。
【あなたのビジネスへの応用】
- Webサイトの入力フォームで、最初は簡単な質問(性別や年代など)から始め、徐々に詳細な情報を入力してもらう。
- アンケートで、前半は誰もが同意するような一般的な質問を並べる。
- お客様との会話の冒頭で、相手の状況や意見に共感を示し、「そうですよね」「分かります」といった同意の相槌を意識的に使う。
相手から「YES」を引き出し続けることで、気づいた時にはあなたの提案をすんなりと受け入れている。そんな状況を作り出すことができるのです。
第5章.扇動する時の共通点
人々を巧みに誘導し、強い影響力を持つリーダーやスピーカーには、いくつかの共通点が存在します。それは、彼らが無意識的、あるいは意識的に、人の心を掴むための「型」を知っているからです。ここでは、その共通点を探っていきましょう。
5-1. 人を動かすのは「言葉」だけではない:ボディランゲージ
人がコミュニケーションにおいて最も影響を受けるのは、話の内容(言語情報)そのものではない、という事実はご存知でしょうか。メラビアンの法則によれば、人が他人に与える影響は、視覚情報(見た目、表情、しぐさ)が55%、聴覚情報(声のトーン、話す速さ)が38%であり、肝心の言語情報(言葉そのものの意味)はわずか7%に過ぎないと言われています。
つまり、何を言うかよりも、どう見せるか、どう聞こえさせるかの方が、はるかに重要なのです。
偉大なリーダーやカリスマ的なスピーカーは、このことを熟知しています。
彼らのスピーチを思い浮かべてみてください。身振り手振りを大きく使い、ステージ上を動き回り、表情豊かに語りかけます。このボディランゲージこそが、聴衆を扇動する最も強力なツールなのです。
極論を言えば、不自然なくらい大げさにボディランゲージを使っても問題ありません。
逆に、人の心を動かすことができない人は、総じて体が固まっています。椅子に座ったまま、身じろぎもせず、淡々と話すだけ。これでは、どんなに素晴らしい内容を話していても、人の心には響きません。
体全体の動きが、言葉に説得力と情熱を与え、聴衆の感情を揺さぶるのです。
5-2. カリスマの思考回路:「Aなるほどねストーリー」
カリスマと呼ばれる人々は、話の構成にも巧みなパターンを用いています。その一つが、私が「カリスマパターン」または「A(え)、なるほどねストーリー」と呼んでいるものです。
これは非常にシンプルで、強力な話法です。
- A(え?):「え、どういうこと?」と思わせる、常識から外れた強烈なフック(問いかけや断言)を提示する。
- なるほどね:そのフックに対して、誰もが「なるほど」と納得するような、巧みな理由付けを行う。
例えば、こうです。
(A)フック:「実は、ポンコツ君(仮名)は天才である」
これを聞いた多くの人は、「え、そんなわけないだろう」と心の中でツッコミを入れ、話の続きに興味を惹かれます。これがフックの役割です。
(なるほどね)理由付け:「なぜなら、ポンコツ君は常にリスナーの代表として、リスナーが何を知りたいのか、どんな疑問を持つのかを的確に読み取る能力に優れている。これは、誰にでもできることではない。」
このように理由を付け加えることで、聞き手は「ああ、なるほど。そういう視点で見れば、確かに彼は天才的なのかもしれない」と納得します。
重要なのは、フックが強烈であればあるほど、その後の理由付けが多少こじつけであっても、人は納得してしまうという点です。
適当なことを言ったとしても、理由付けさえうまければ、「この人はすごいことを言う」「物事の本質を見抜いている」と、カリスマとして認識されるのです。
これは、スピーチだけでなく、コピーライティングの世界でも全く同じです。
読者の目を引く強烈な見出し(フック)で興味を惹きつけ、本文でその理由を丁寧に説明する。この構造によって、人々は文章の世界に引き込まれていきます。
5-3. 五感に訴えかける「イメージ戦略」
人は、理屈ではなくイメージで物事を判断します。そして、そのイメージは五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を通じて作られます。カリスマは、この五感へのアプローチにも長けています。
1. 視覚情報:見た目がすべて
- 服装: カリスマスピーカーは、聴衆よりもワンランク上の服装を意識します。周りがスーツなら、より上質なスーツを着る。そうすることで、「この人は自分たちとは違う、特別な存在だ」というイメージを視覚的に植え付けます。
- ブランディング: Apple社は、この視覚によるイメージ戦略の天才です。映画をよく見ると、ヒーロー(善玉)側の登場人物はApple製品を使い、ヴィラン(悪役)は使っていないことが多いのです。これを無意識のうちに何度も見せられることで、私たちの頭の中には「Apple=善、クール、ヒーローの象徴」というイメージが強力に刷り込まれていきます。
2. 聴覚情報:耳からの洗脳
実は、視覚よりも聴覚の方が、人は洗脳されやすいと言われています。
音声メディア(ラジオやポッドキャスト)に熱心なファンが多いのはこのためです。パーソナリティの声を繰り返し聞くうちに、まるで親しい友人のように感じ、強い信頼関係が生まれます。
メールマガジンやLINEで文章を送るだけでなく、たまには短い音声メッセージを送ってみる。それだけで、お客様との関係性は劇的に深まります。なぜなら、声には文章では伝わらない感情や人柄が乗るからです。
3. 触覚情報:肌で感じる説得力
触れたものの感覚も、人の判断に大きな影響を与えます。
ある研究では、セールスの際に、お客様を硬い椅子に座らせるよりも、柔らかく座り心地の良い椅子に座らせた方が、成約率が高まるという結果が出ています。
体がリラックスすることで、心もオープンになり、提案を受け入れやすくなるのです。もしあなたが対面での営業成績を上げたいなら、まずはお客様が座る椅子を、より良いものに変えてみることをお勧めします。
4. 嗅覚・味覚情報:記憶を呼び覚ますスイッチ
五感の中でも、匂いの記憶は最も感情と結びつきやすく、忘れにくいと言われています。
特定のお店に入ると、いつも同じアロマの香りがする。その香りを街中でふと嗅いだ瞬間に、そのお店のことを思い出す。そんな経験はありませんか?
これは、「パターン認識」を利用した強力な刷り込みです。
「この匂い=あのお店」という結びつきを、繰り返し体験させることで、お客様の脳に深く刻み込むのです。
毎回違う香りを使うのではなく、自社のブランドを象徴する「決まった香り」を使い続けること。それが、お客様の記憶に残り続けるための重要な戦略となります。
これらのように、扇動の達人たちは、言葉だけでなく、五感のすべてを使って、相手の無意識に働きかけ、巧みにイメージをコントロールしているのです。
第6章.扇動のコツは疲れさせる!?
これまでの章では、意識の集中やイメージ戦略といった、比較的ソフトなアプローチについてお話ししてきました。しかし、扇動マーケティングには、より強烈で、人の理性を根本から揺さぶるような、ダークサイドのテクニックも存在します。
その核心を一言で言うならば、「相手を疲れさせる」ということです。
これは、物理的、精神的に相手を疲弊させることで、正常な判断能力を奪い、こちらの言うことを何でも受け入れてしまう状態に導く、という非常に強力な手法です。
6-1. 脳を「処理不能状態」に追い込む
人間の脳や体には、キャパシティ(許容量)があります。そのキャパシティを超えるほどの負荷がかかると、脳は正常に機能しなくなり、「処理不能状態」に陥ります。
この状態になると、人は複雑な思考ができなくなり、外部からの指示や情報に対して無抵抗になります。まるで、コンピュータがフリーズして、どんな命令でも受け付けてしまうような状態です。
この「処理不能状態」を作り出す方法は、大きく分けて二つあります。
1. 制限をかける(枯渇させる)
一つは、人間にとって必要不可欠なものを制限し、心身を極限まで追い込む方法です。
- 肉体的苦痛: 睡眠時間を奪う、長時間の正座をさせるなど。
- 食事制限: 空腹状態を続けさせることで、思考力が低下し、食べ物のことしか考えられなくなります。
- 情報制限: 外部との接触を断ち、特定の情報だけを与え続ける。
カルト的な集団が、信者を洗脳する際によく使う手口です。寝かせずに長時間の研修を行ったり、粗末な食事しか与えなかったりするのは、参加者を意図的にこの「処理不能状態」に導き、教義を刷り込みやすくするためなのです。
2. 過剰に与える(パンクさせる)
もう一つは、制限とは逆に、キャパシティを超えるほどのタスクや情報を過剰に与え、脳をパンクさせる方法です。
自己啓発系の高額セミナーなどで、大声で目標を叫ばせたり、延々とグループワークをさせたり、次から次へと課題を与え続けたりすることがあります。
参加者は、あまりにも多くのことをやらされ過ぎて、頭がパニック状態を超え、やがて思考停止に陥ります。すべてをやり遂げた後には、一種のトランス状態のような高揚感が生まれ、「このセミナーは素晴らしかった」「自分は変われたんだ」と錯覚してしまうのです。
脳が疲れ果て、正常な判断ができない状態で与えられた情報を、人は「真実だ」と信じ込んでしまいます。
6-2. 光を使った巧妙な洗脳テクニック
このような極端な方法でなくとも、人の脳を疲れさせ、集中力をコントロールする、より巧妙なテクニックが存在します。その代表例が「光」を使った演出です。
特に、自己啓発セミナーやマインドセット系の講演会で、「青い光」のスポットライトが多用されることに気づいたことはありますか?
これには、明確な意図があります。
青い光には、人の目を非常に疲れさせる効果があるのです。
ステージ全体が青い光で照らされていると、観客は知らず知らずのうちに目が疲労していきます。目が疲れてくると、少し眠気を感じるような、ふわふわとした感覚になります。
しかし、ステージ上のスピーカーは、マイクを通して力強く語りかけてくるため、完全に眠ることはできません。
「眠い、でも眠れない」
この、起きているのか眠っているのか分からない、意識が朦朧とした状態。
これが、心理学でいう「変性意識状態」です。
この状態になると、人の理性的な判断力は著しく低下し、暗示にかかりやすくなります。つまり、洗脳に最適な心理状態なのです。
スピーカーの話す言葉が、何の抵抗もなく、ダイレクトに潜在意識へとインプットされていきます。
青いバックライトは、数千円も出せばインターネットで簡単に購入できます。もしあなたがセミナー講師などで、参加者の集中力を高め、メッセージを深く届けたいのであれば、照明の色を「青」に変えてみるだけで、会場の雰囲気と参加者の反応は劇的に変わるかもしれません。
もちろん、これは悪用厳禁のテクニックです。
しかし、私たちが普段参加しているイベントやライブなどで、いかに巧みに心理誘導が行われているかを知る上で、非常に興味深い事例だと言えるでしょう。
相手を疲れさせ、判断力を鈍らせる。
これもまた、扇動の紛れもない一つの側面なのです。
第7章.すぐに扇動を実践する実例
ここまでは、扇動の心理的な背景や、少し大掛かりなテクニックについてお話ししてきました。この章では、あなたが明日から、いや、今日からすぐにでも使える、「言葉の力(コピーライティング)」を使った、簡単かつ強力な扇動技法をご紹介します。
文章や会話に、ほんの少しの工夫を加えるだけで、相手に与える印象は劇的に変わります。
7-1. すべてを繋げる魔法の言葉:「連結結合法」
これは、個人的に最強のコピーライティング技法の一つだと考えているものです。
その名も「連結結合法」。
やり方は、驚くほど簡単です。
すべての言葉を、「〇〇だから、××です」という形で、常に理由を付けて繋げるのです。
例えば、部下に対して単に「君はダメだ」と言っても、相手は反発するか、心を閉ざしてしまうだけでしょう。
しかし、ここに「だから」を加えてみます。
「君は、報告が遅れる傾向がある。だから、プロジェクト全体の進行に影響が出てしまうんだ。」
いかがでしょうか。
ただ否定されるよりも、はるかに受け入れやすくなったと思いませんか?
不思議なことに、人は、たとえその理由が正しくなくても、あるいは少しこじつけであっても、「理由がある」というだけで、その事柄を納得しやすくなるという性質を持っています。
思い出してください。第5章でお話しした「カリスマパターン」も、本質は「巧みな理由付け」でした。
これを習慣にするのです。
何かを主張する時、何かを説明する時、常に「なぜなら」「~だから」という言葉を使って、理由を言う癖をつける。
それだけで、あなたの言葉の説得力は飛躍的に向上します。
面白いことに、ここで言う「理由」は、客観的な事実である必要すらありません。
あなたの考え方や思想、つまり「持論」でも構わないのです。
世の中でカリスマと呼ばれている人々をよく観察してみてください。彼らは、常に自分の考え、つまり「自論」を、さも世界の真理であるかのように、自信を持って語っていませんか?
「あなたがビジネスで成功できないのは、教材ばかり読んでいるからだ。」
「なぜなら、行動しない知識には、1円の価値もないからだ。」
このように、「〇〇だから」と「なぜなら」を組み合わせることで、たとえそれが個人的な意見であっても、聞いている側は「なるほど、そういうものなのか」と、無意識のうちに納得させられてしまうのです。
何でも理由を言う。
この癖をつけるだけで、あなたは簡単に、そして高確率で、相手を洗脳・扇動することが可能になります。
7-2. 前提を刷り込む最強のキーワード:「なぜ」
「連結結合法」をさらに強力にする、魔法のキーワードがあります。
それが、「なぜ」という言葉です。
この「なぜ」という言葉を文頭に置くことで、とんでもない現象が起きます。
それは、「なぜ」以降に続く文章が、議論の余地のない「前提」として、相手の頭に刷り込まれてしまうという現象です。
有名な例に、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』という本のタイトルがあります。
このタイトルを読んだ瞬間、私たちの頭の中では、「さおだけ屋は潰れないものである」という事実が、当たり前の前提としてインプットされてしまいます。
そして、意識は「どうして潰れないんだろう?」という「理由」を探すことに向かいます。
もし、このタイトルが「さおだけ屋は潰れません」だったら、どうでしょうか。
「いや、そんなことはないだろう」「潰れる店もあるはずだ」と、反論の余地が生まれます。
しかし、「なぜ、潰れないのか?」と問われた瞬間に、私たちは「潰れない」という土俵の上で、思考を始めることを強制されてしまうのです。
このテクニックは、恐ろしいほど強力です。
例えば、私があなたを扇動しようと思ったら、こう言います。
「なぜ、ゆーま先生のYouTubeを見ている人は、成功者が続出するのか?」
この一文を言った瞬間に、聞いているあなたの頭の中では、「ゆーま先生のYouTubeを見ると成功者が出る」ということが、確定した前提になります。
あとは、その理由を後付けで説明すれば、あなたは「なるほど、だから成功するのか」と、深く納得してしまうでしょう。
「なぜ」という言葉は、相手の思考のスタート地点を、こちらの望む場所に強制的に設定する、まさに最強の扇動キーワードなのです。
あなたのビジネスの商品やサービスをアピールする際に、ぜひこの「なぜ」を使ってみてください。
「なぜ、弊社の〇〇を使うと、ライバルに圧勝できるのか?」
「なぜ、リピート率98%の顧客は、〇〇を絶対に手放さないのか?」
この一言を加えるだけで、あなたのメッセージの説得力は、異次元のレベルに到達するはずです。
第8章.マイフレンドジョンテクニックとは
最後に、物語の力を利用した、非常に人間味あふれる、それでいて効果的な扇動技法をご紹介します。それが「マイフレンド・ジョン・テクニック」です。
これは、セールスの神様と呼ばれるジョー・ジラードが使っていたとされる話法に由来します。
8-1. 第三者の物語はなぜ心に響くのか
「マイフレンド・ジョン・テクニック」とは、簡単に言えば、「私の友人のジョンがね…」という形で、伝えたい内容を、自分自身ではなく、第三者(知人や友人)の体験談として語る手法です。
なぜ、このような回りくどい話し方をするのでしょうか?
そこには、人間の深層心理を巧みについた、2つの理由があります。
1. 説得への抵抗感をなくす
人は、誰かから直接的に「この商品は素晴らしいですよ」「これを買うべきです」と説得されると、無意識のうちに「売り込まれている」と感じ、心の壁を作ってしまいます。
しかし、これが第三者の話になると、状況は一変します。
「私の友人が、このサプリを飲み始めたら、すごく体調が良くなったって言ってたんですよ。」
これは、あなたに対する直接的なセールスではありません。あくまで「友人の話」という体裁をとっているため、聞き手はリラックスして、警戒心なく話を聞くことができます。
売り込み特有のプレッシャーがないため、物語がすんなりと心に入ってくるのです。
2. 自分事として感情移入しやすくなる
人は、他人の体験談を聞くと、まるで自分の身に起きたことのように感じてしまう(追体験する)という性質を持っています。
「お客様の声」や「導入事例」が、マーケティングにおいて非常に有効なのはこのためです。
商品を使った人が、どんな悩みを抱えていて、どうやってその問題を解決し、どんな素晴らしい未来を手に入れたのか。そのストーリーに、私たちは自分の姿を重ね合わせ、「もしかしたら、自分もこの人のようになれるかもしれない」と、強い期待感を抱くのです。
例えば、あなたが「億万長者になる方法」という本を売りたいとします。
(直接的な説得)
「私がこの本を読んで、億万長者になったんです!あなたもぜひ読んでください!」
→ 「本当かよ?」「うさんくさいな」と疑われやすい。
(マイフレンド・ジョン・テクニック)
「私の知り合いのジョン君っていうのがいるんですけど、彼が先日、この『億万長者になる方法』という本を読んだら、本当にビジネスが大当たりして、めちゃくちゃ金持ちになったんですよね。」
→ 「へぇ、その本、何ていう本ですか?」と、自然に興味が湧いてくる。
直接的な意見よりも、間接的な第三者の物語の方が、はるかに人の心を動かすのです。
8-2. あなたのビジネスに「ジョン」を登場させる方法
このテクニックは、あらゆるビジネスシーンで応用が可能です。
- お客様の声を活用する:
これは、マイフレンド・ジョン・テクニックの典型例です。お客様にインタビューし、その成功体験を、顔写真や実名と共に、Webサイトやパンフレットに掲載しましょう。第三者のリアルな声ほど、強力な証拠はありません。 - プレゼンテーションに物語を組み込む:
自社のサービスの機能やスペックを淡々と説明するのではなく、「このサービスを導入された、とある中小企業の社長様がいらっしゃいまして…」と、具体的な顧客の成功ストーリーを語りましょう。聞き手は、その社長に自分を投影し、サービスの価値をより深く理解してくれます。 - コンテンツマーケティングで事例を紹介する:
ブログやSNSで、自社のノウハウを語るだけでなく、「私たちのクライアントである〇〇社は、この方法を使って、売上を3倍に伸ばしました」というように、他人の成功事例を積極的に紹介しましょう。
海外のビジネス書を読むと、このテクニックが非常に多く使われていることに気づきます。
「私の友人である、コンサルタントの〇〇は、いつもこう言っている…」
「私が以前コーチングした、ある女性経営者は…」
といった形で、著者の主張を補強するために、数多くの友人の成功事例が登場します。
これは、読者に内容を信じさせ、思い込みを強化するための、非常に計算された手法なのです。
あなたも、自分の商品やサービスを語る際に、ぜひあなたの「ジョン」を登場させてみてください。
それは、実在のお客様かもしれませんし、あるいは、特定の顧客層を代表する架空のペルソナかもしれません。
その「ジョン」の物語を語ることによって、あなたのメッセージは、単なる説明から、人の心を動かす強力なストーリーへと昇華するでしょう。
本日のまとめ
今回は、「扇動マーケティング」という、非常に強力で、少し危険なテーマについて、深く掘り下げてきました。
最後にもう一度、重要なポイントを振り返りましょう。
- 扇動の本質は「無意識的な誘導」であること。
- その鍵は、相手の意識を「たった一つのこと」に集中させること。
- 人は一点に集中すると理性が麻痺し、オープンマインドになる。
- 扇動の前提には、相手の「思い込み」を理解し、利用することがある。
- 時間制限、接触頻度、イエスセットなど、日常には巧妙な扇動テクニックが溢れている。
- カリスマは、ボディランゲージや「Aなるほどねストーリー」で人を惹きつける。
- 五感へのアプローチは、強力なイメージを刷り込む。
- 相手を「疲れさせる」ことは、究極の扇動手法である。
- 「だから」と「なぜ」という言葉は、文章の説得力を劇的に高める。
- 第三者の物語(マイフレンド・ジョン)は、直接的な説得よりも人の心を動かす。
多くのテクニックをご紹介しましたが、私があなたに最も伝えたかったことは、冒頭にお話しした「包丁の比喩」です。
これらの知識は、使い方次第で、お客様を幸せにすることも、不幸にすることもできます。
悪用しようと思えば、いくらでも悪用できてしまうでしょう。
しかし、この記事をここまで読んでくださったあなたは、お客様との真摯な関係を築きたいと願う、誠実な経営者であると信じています。
マーケティングとは、突き詰めれば「お客様との関係値をどう作っていくか」ということに他なりません。今回お話ししたテクニックは、その関係をより良く、より深くするための、あくまでプラスアルファの「手法」に過ぎないのです。
前提として、あなたがお客様に届けたいと願う、本当に素晴らしい商品やサービスがあること。
そして、その商品を通じて、お客様に幸せになってほしいという、純粋な想いがあること。
その上で、この扇動マーケティングの知識を、正しい目的のために使っていただければ、これほど嬉しいことはありません。
あなたのビジネスが、お客様との素晴らしい関係に満ち溢れ、大きく飛躍していくことを、心から願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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